都市再開発法では「3分の2の合意があれば事業を実施できる」とされている。しかし、現実はそうはいかない。合意率が92パーセントに達しても、港区はさらに同意率を高めるよう求めた。とくに10人ほどの「反対の会」への対応を重視していた。「たとえ合意率が法律の規定を超えたとしても、地元区としては、反対組織があるようでは認可を下ろしにくい」ということなのだろう。反対の会は、反対意見や疑問や不安を綴った文書を、地区の住民に配っていた。
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私たちはそれらのひとつひとつに回答し、理解を得ようとしてきたが、なかなか受け入れられず、正式な話し合いの場も持てずにいた。それが、やっと反対の会から「森ビルと話し合ってもいい。ただし社長以外とは話さない。社長を連れてこい」という申し入れがあった。担当者は「とても話し合いにはなりません。一方的に罵倒されるだけです」と止めたが、権利者交渉で1番辛いのは、罵声を浴びせられることではない。話ができないことだ。やっと話し合いの機会を与えてもらったのだ。「喜んで出席する」と答えた。仮に、向こうが私を名指ししなくても、出席したいくらいの気持ちだった。交渉事は、担当者が地ならしをして、最後に社長が出ていって決着をつけるやり方が一般的だが、私は逆である。トップが最前線に立つことで、われわれの「本気」を伝えなければならない。